弁護士も万能ではない

2021年12月3日

私は運航仮者として、仕事として車両の運行管理全般に従事しております。仕事柄交通事故処理も業務の範囲になります。私の会社は小さいタクシー会社で、自動車保険も幾つかのタクシー会社が集まって立ち上げた保険会社と契約しております。この保険会社は所謂“交渉権”なしの保険会社で、事故処理や交渉事は加入会社の社員が行い、その交渉や話し合いの結果に基づいて保険金だけを支払うシステムです。人身事故の場合は、保険会社の担当者のアドバイスの元に交渉を進めていくのですが、物損の場合はタクシー会社担当者独自の判断で進めます。当然、そこには、交渉の根本となる“過失割合”についても、タクシー会社の担当者が行います。 今回紹介する事故は、5年前の2月中旬頃に発生した事故の顛末ですが、非常に印象に残っているので紹介させて頂きます。 事故の詳細 発生は2月下旬の午前2時頃に発生しました。当時は2月中旬という事もあり、非常に寒さが厳しい時でした。当時の気温は0度を下回り、道路は凍結している所が多くありました。当社の車両は片側2車線の右側を時速40キロ走行しておりました。そこを一台のバイク(中型車)がかなりのスピードで追い抜いていきました。当該乗務員は、その時は気にすることもなく、直進進行しておりましたが、約10分ほど走行し河川にかかる橋にさしかかった時、突然、目の前にバイクが横たわっていたので、慌ててブレーキを踏みましたが、橋の上が暗い上に橋自体が丘の様に隆起している上にすこし左カーブだった為発見が遅かった事、橋の上がカッチカチに凍結していた事もあり間に合わず衝突しました。転倒していたのは、先ほど追い抜かして行ったバイクです。運転していたのは35歳の男性で、スピードを出して橋に侵入し、左カーブの上に凍結していた為スリップして転倒した様です。 その後の経緯 ここから私の体験となります。この事故は私が処理に当たりました。まず、ドライブレコーダーで状況を分析し、また、警察の実況見分を参考にした結果、彼は弊社の車両が通る約10分前位に転倒さえており、その後、バイクを回収するとか、後続の車両に知らせるとかの二次災害の回避措置を一切とらず、放置したまま何処かに消えてしまってたのです。バイクと当社の車両が衝突してから、直ぐに現場に出てきて、「お前がぶつけた」と叫んでおりました。彼は転倒しているのに、なぜかケガをしてなかったとの事で(これは本人に確認とりました)、10分もあれば二次災害の回避措置ができたはず、また、事故直後に出てきて当方の過失を主張している等を考慮し、相手には故意にバイクを放置したか、そうで無くてもあまりにも杜撰で無責任な行動である事を指摘して、「一切賠償は出来ない、こちらが無過失とは言わないが、あなたにも相当の過失がある」と伝えました。最初が激高してましたが、それでもゆっくりと優しく説得し、双方自損自弁で解決しようという事になりました。その時示談書を交わしていればよかったのですが、電話で示談解決(口約束)で終了させてしまいました。まあ、それが失敗だったのですが・・・・・ その1年後に、突然、彼から訴状が送られてきました。内容は当時のバイクの修理代15万円を支払いというものでした。簡易裁判所だったので、自分でやることも出来たのですが、社長から知り合いの弁護士を入れるといわれたので、その弁護士に依頼しました。その弁護士は、話していると「この人交通事故の交渉した事あるのかな?」と疑問に感じる事が多く、今回の事故も「大丈夫です。これなら0:100で行けます」と豪語するので、「え?それは無理でしょう」と思いながらも、あまりにも自信満々に言うので、まあ、何か策でもあるのかなと思い、すべての資料を渡して任せる事に・・・・・裁判の日は出廷せず全て弁護士さんに任せました。後日、弁護士から電話が来て、かなり不利な状況だったけど、何とかまとめたので、和解金5万円だけどどうするとの電話が・・・・・・0:100じゃ無かったの?と聞くと、「そんなの無理だろ」と言ってくる始末。最初から分かっていたよ、だけどあなたが豪語するから任せたんでしょ、と言うと、そんなこと言ってないの一点張り。結局、他の弁護士に相談したら判決貰って控訴した所でさらに不利になるので、それで和解し方いいとの事。二度手間三度手間かけて、素人でも出せる結果となりました。後日、社長からその弁護士の事聞いたら、「離婚訴訟が専門」と聞かされて、社長曰く「俺の離婚時に世話になったんで大丈夫かなと思ったけど、そんな結果かよ、弁護士も万能じゃないな」との事でした。もっとしっかりした弁護士は他にもいたのに、よりによってそんな人に任せるとは・・・・・・・弁護依頼はちゃんとリサーチしてからが鉄則ですね。